フリーのディエッサ SPITFISH の紹介
投稿日:2008-05-23 Fri
ディエッサとは、ボーカルの歯擦音(サシスセソやツ発声時の高音)を和らげるエフェクタです。FL Studioでは、コンプリミッター Maximus にディエッサの機能が用意されていますが、本体に添付されているものはデモ版なので、別途購入の必要があります。
そこで今回はフリーのディエッサ SPITFISH を紹介します。

今回紹介する内容は次のとおりです。
・SPITFISHのダウンロード方法
・SPITFISHのインストール方法
・SPITFISHのロード方法
・SPITFISHの操作方法(プリセットを選ぶ)
・SPITFISHの操作方法(操作詳細)
・ボーカロイドへの適用について
・サンプルプロジェクト
■ SPITFISHのダウンロード方法
http://www.digitalfishphones.comを開き、[enter site]をクリックします。

左上のメニューから[audio plugins]、[the fish fillets]をクリックします。

[download]ボタンを押し、the_fish_fillets_v1_1.zipをダウンロードします。

■ SPITFISHのインストール方法
the_fish_fillets_v1_1.zip中のファイルを、VSTプラグインのフォルダ(例: C:\Program Files\VSTPlugins)にコピーします。
SPITFISH以外にも2つのプラグインが含まれています。今回は紹介しませんので概略だけ書いておきます。
・BLOCKFISH コンプレッサー
・FLOORFISH ゲート/エクスパンダー
ドラムにゲートとしてかけると良い感じです。
リバーブをかけた後ゲートをかけると’90年前後に流行ったゲートリバーブの音が再現できます。
■ SPITFISHのロード方法
ミキサーのFXスロットで[▼]ボタンを押し、[Select]-[More...]メニューを選択します。

[Refresh]ボタンを押し、[Fast scan (recommended)]メニューを選択します。

一覧にSPITFISHが追加されますので、チェックした後、[X]ボタンを押して画面を閉じます。

(以上が初回追加時の手順です。2回目以降はここまでの手順は不要です。)
ミキサーのFXスロットで[▼]ボタンを押し、[Select]-[SPITFISH]メニューを選択します。

FXスロットにSPITFISHがロードされます。

補足:
SPITFISHは、ディエッサーをかける声が出力されるミキサートラックに追加してください。
■ SPITFISHの操作方法(プリセットを選ぶ)
細かい操作が面倒な方はプリセットを読み込みましょう。

声に合わせて次のどれかを選択すればまず問題ありません。softとhardでディエッサの係り具合が違いますが、これは耳で聞いて不自然じゃない方を選択します。
・female voice (soft) - 女声用、ディエッサの反応は普通
・female voice (hard) - 女声用、ディエッサの反応は敏感
・male voice (soft) - 男声用、ディエッサの反応は普通
・male voice (hard) - 男声用、ディエッサの反応は敏感
■ SPITFISHの操作方法(操作詳細)
(1) 説明の前に
操作の詳細を説明する前にディエッサの動作原理を調べてみましょう。
Sound Engineering Section-8 Effectsの「8-4 コンプレッサ/リミッタ」の章からポイントを引用します。
つまるところディエセッサとは、コンプレッサのネガティブフィードバックの中に、4~8kHz近辺を強調するフィルタを入れた物というわけ。
つまり、サイドチェインに歯擦音の周波数を強調するフィルタを設定し、歯擦音を圧縮して潰すコンプレッサなんですね。
そう考えると「多分コンプレッサの効き具合と周波数帯を設定するツマミがあるんだなー」ということが予想できます。
なお、記事「Fruity Peak Controllerの使い方(その2)」で、FL Studio単体でディエッサを作る実験をしています。ディエッサの動作原理理解の助けになると思いますので是非読んでください。
(2) 周波数の設定

[tune]では、歯擦音が発声しているであろう周波数を4kHz~12kHzの範囲で指定します。
[listen]ボタンをオンにすると、SPITFISHが検出した歯擦音を聞くことができます。音声を再生した状態で[listen]ボタンをオンにし、[tune]を回して歯擦音の周波数を決めてください。
FL Studioを利用されている場合、EQUO(グラフィックイコライザ)を使って周波数を目視確認することができます。
SPITFISHの前にEQUOを追加し、音声を再生してください。
歯擦音が発声したとき、2つの大きい山が発声します。周波数の高い(右の)山が歯擦音です。

マウスをグラフの上に移動することで周波数を表示することができます。

(3) 感度の設定

[sense]ツマミで歯擦音の検出感度を指定します。歯擦音が検出された場合、ツマミ上部のメーターが表示されますので、サ行の音を再生してメーターがちょうど振り切れる位に設定すると良いでしょう。
[soft]ボタンをオフにすると、検出感度をより敏感にすることができます。
(3) 圧縮具合の設定

[depth]ツマミで歯擦音の圧縮具合を調整できます。右に回すほど圧縮量は大きくなり歯擦音が目立たなくなりますが、同時に声の艶の成分も失われることになりますので回しすぎは禁物です。声を聞きながら丁度良い点を見つけてください。(面倒なら真ん中にしておけば間違いないです)
(4) その他の設定

[bypass]ボタンをオンにすると、SPITFISHの処理をバイパスできます。
[stereo]ボタンをオンにすると、ステレオで処理します。入力音声がステレオの場合オンにすると良いでしょう。
注:[stereo]ボタンをオンにしたとき、歯擦音検出は入力をモノラル化した音に対して行われます。
■ ボーカロイドへの適用について
(1) 全体的な注意事項
ボーカロイドが出力したWAVEファイルの音量は小さいので、Normalizeした上でディエッサをかけると良いでしょう。

(2) 初音ミクの場合

音程にかかわらず歯擦音は10kHz前後にあるようですので、[tune]ツマミを10kHz、つまり8kHzと12kHzの丁度真ん中に設定すると良いでしょう。

(3) 鏡音リン・レンの場合

リン・レンの場合、困ったことに歯擦音が殆ど出力されません。無理にディエッサをかけると声の艶が失われるような気がします。
むしろどうやって歯擦音を増やし、発音の切れを良くするかが重要と思われます。
イコライザで10kHzあたりを持ち上げてやると若干切れが良くなりますが、劇的には改善されません。
有名な方法ですが歯擦音を補う方法を1つ。鏡音リン・レンと初音ミク両方をお持ちの場合、別トラックで初音ミクに歯擦音を補ってもらうと良いでしょう。初音ミクのトラックはノート長は短めに、DYNは小さめにすると違和感がありません。歯擦音を補った場合は、初音ミクのときと同様にディエッサをかけると良いでしょう。

■ サンプルプロジェクト
FL Studio用のサンプルプロジェクトです。
[ spitfish-demo-1.zip ]
SPITFISHにより歯擦音が軽減される様子を観察できます。

ディエッサなし
[ spitfish-demo-1-off.mp3 ]
ディエッサあり
[ spitfish-demo-1-on.mp3 ]
以上
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